【私が責任をもってご紹介します!(金子稚子)】

108日(金)・9日(土)に開催するACP(人生会議)に関するセミナー。「ACP(人生会議)に本当に必要なことって何だろう?」という問いに対して、さまざまな立場の方から話を伺います。

ここでは、セミナーをより深く楽しんで&学んでいただくために、登壇者をお一人ずつ紹介しています。

今回は、9日(土)1300〜に登壇予定の川村真妃さんをご紹介します。

 

今、医師の立場を超えて地域で取り組むACPと、本当に必要なこと

NPO法人 幸ハウス   河村真妃代表理事

 

 

 

 

 

 

「穏やかな死を支える医師になりたい」

 

NPO法人幸ハウスで代表理事を務める川村真妃さんは、医療に携わる人としては異色の動機で医師になった人と言っていいかもしれません。

きっかけはお祖父様の死だったと言います。

「祖父の、祖父らしさが失われた死に衝撃を受けました。自分だったら嫌だ、こうなりたくないと……」

川村さんが異色なのは、その時の思いから「穏やかな死を支える医師になりたい」と心に決め、医師になり、そしてそれをずっと探し求め続けてきたところです。

人々の苦痛を取り除こうという医療の最前線で、しかもたった一人で、「穏やかな死を支えたい」とは、どれほど困難なことだったか想像に難くありません。医師として、求められるままに、あるいは指示されるままに医療を提供しながら、かつての祖父のような患者を前に、「どうしたら『穏やかな死』を支えられるのか、ずっとずっと探し求めていた」と川村さんは言います。

しかし壁は厚く、「穏やかな死を支えよう」という医師として自分にできることはないのかもしれないと絶望し、結婚を機に一度医療から離れることになりました。

患者自身が考えることのできる場を

 

しかし、このことが転機となりました。

海外のホスピスや看取りの現場を数多く見聞する機会に恵まれたのです。そして川村さんは、医師だけが看取りに関わるわけではない、ということがストンと腑に落ちたと言います。

「私がめざしていたことは、医師である私がどうにかできることではなく、ひょっとしたら、患者さん自身が『自分らしさ』を探究できていないだけなのではないか、ということに思い至りました」

そこから川村さんは再び動き出します。「自分らしさや、何を大切にしながら残りの人生を生きるのか・生きたいのかということを、患者自身が考えることのできる場」をと、医療サービスの提供ではなく、場づくりに着手することになるのです。

そうして2018年、NPO法人幸ハウスは誕生しました。

 

「もっと前に知りたかった」の声から生まれた414カード

 

ここでは、「どんなことを大切にしたいのか?」が基本の問いとなります。そして対話を重ねていくことで、患者自身が自分自身について深く考えることになるのでしょう。私が川村さんの取り組みに注目するのは、本人が自分自身について深く考えること、これこそがACPのスタートラインだと考えるからです。

「『病気になって気づくことがあった。それは病気にならなかったら気づけなかったと思う。こうしたことをもっと前に知りたかった……』と、患者さんからよく聞かされます」

それは、幸ハウスのコンセプトでもある、“病気になっても病人にならない”ことそのものと言えるのではないでしょうか。患者のこの言葉は、病気には私たちの認識とはまた別の側面があることを伝えてくれているように思います。

さらに、川村さんは「こうしたことをもっと前に知りたかった」という患者たちの声を受け、414(よいし)カードの制作に着手することになります。

このカードがどのように使われているのか(実は私もユーザーの一人ですが)、そしてそのカードを元にした対話によって変わっていく死の受け止め方についても、当日はお話が伺えたらと思います。

ちなみに川村さんは、緩和医として臨床の現場にも立っています。「穏やかな死を支える医師になりたい」という気持ちはどう変化したのか、あるいは変化していないのか、この繊細な心の動きも、医療従事者だけでなく、また専門家でなくても人の最期に接するすべての人に大きな示唆を与えることと思います。

「穏やかな死」とは何でしょうね? 川村さんとの対話が楽しみです。